
和歌山放送の第102回情報懇談会が10日、和歌山市のホテルアバローム紀の国で開かれました。「災害と情報伝達」がテーマで、京都大学防災研究所の牧紀男教授の基調講演の後、和歌山県の木村雅人危機管理監、和歌山市の尾花正啓市長、新宮市の田岡実千年市長、串本町の田嶋勝正町長が加わり、実際に防災・防災対策を進める立場から熱心なパネルディスカッションを展開しました。
その中で各パネリストは、大災害発生時の第1次情報提供者としてのラジオの重要性を指摘、和歌山放送にとっても大きな課題を提起された情報懇談会となりました。
情報伝達としてのラジオは、3・11の東日本大震災以後、発災前後ラジオが第1次情報提供者として最も役立ち、国民の命を守るメディアとして再評価されました。近い将来南海トラフなどの巨大地震が想定される中、政府・総務省は、ラジオの存在を見直し、「国土強靭化」の中に組み込んで防災・減災の重要なツールとして活用することになり、電波の性格上、放送施設を主に海岸線沿いに設け、津波に弱いAM放送をFM放送でも受けて災害時にも情報を確保するという「FM補完」事業が今年度からスタート。
地理的、地形的な難聴地域が多く、大津波が数分で到来する紀伊半島でも、県域AM局の放送を、国・県が山の上に新たにFM送信所・放送施設を設け、和歌山放送からのAM放送をFMでも受けて両方の電波で県民に送りつづけるという「FM補完事業」が今年度から3ヵ年でスタートする運びとなり、県の事業予算はこの9月県議会で承認されたところです。
もちろん行政の防災対策は、防災行政無線や携帯メールなど多重的に行われるものですが、AMラジオ局は、災害時いわば「稲村の火」としての重要な役割を公式に託されたわけで身の引き締まる思いがする懇談会となりました。
□和歌山放送ニュース再録
◎「災害と情報伝達」テーマに和歌山放送情報懇談会 「ラジオの重要性」指摘(写真付)
(2014年11月10日 )
和歌山放送の第102回情報懇談会がきょう(11/10)、和歌山市のホテルで開かれ、「災害と情報伝達」をテーマにした基調講演やパネルディスカッションで、災害の専門家や自治体の首長らがラジオの重要性を指摘しました。

(会場いっぱいの200人が詰めかけた(会場は和歌山市・アバローム紀の国)
国の国土強靭化策の一環として、和歌山県内では、災害時の速報体制の充実をはかるため、県がFM波による中継施設を整備し、和歌山放送がこの施設を使ってそのままAMの放送をFMでも流す準備が進められています。
きょう午後3時から和歌山市のホテルアバローム紀の国で開かれた和歌山放送の情報懇談会では、京都大学防災研究所の牧紀男(まき・のりお)教授が基調講演しました。

(基調講演する牧・京都大学防災研究所教授)
牧教授は、「災害時に何が起きているのかを伝える上で重要な役割を担うメディアはいろいろあるが、最も利用されているのがラジオだ」と指摘しました。そして「被災地で求められる情報は、時間の経過とともに危険を知らせる情報から、被害を伝える情報に変わり、さらに生活情報へと変わってくる」と述べ、臨機応変に情報を流せるラジオの重要性を強調しました。

(基調講演に引き続き行われたパネルディスカッション)
また、パネルディスカッションでは、和歌山県の木村雅人(きむら・まさと)危機管理監が「ラジオは、停電時にも聞くことができ、持ち運びできる貴重な情報入手の手段だ」と述べ、今年度から3年かけて、県内にFMラジオの中継局を整備する方針を示しました。

(木村・和歌山県危機管理監)
また、新宮市の田岡実千年(たおか・みちとし)市長は、3年前の紀伊半島大水害での情報の入手方法を住民にアンケートした結果、防災行政無線よりラジオの方が多かったことを紹介し、FM波の施設整備を歓迎するとともに、「行政の持つ情報を早く正確に住民に知らせるため、行政とメディアの連携が必要だ」と指摘しました。

(田岡・新宮市長)
また南海トラフの地震発生からわずか2分で津波が押し寄せると想定される串本町の田嶋勝正(たしま・かつまさ)町長は、行政機能の高台移転などを進めるための財源として合併特例債を活用してひねり出している現状を報告し、和歌山市の尾花正啓(おばな・まさひろ)市長は、「南海トラフ巨大地震が発生した場合、県の想定では、何も対策をとらないと1万8千人の和歌山市民が犠牲になるとされているが、和歌山市に津波が到達するまで40分あるので、必ず全員逃げ切れるよう対策を進めているし、和歌山放送などと防災協定を結んでいる」と強調しました。

(田嶋・串本町長)

(尾花・和歌山市長)
会場には、自治体の職員らおよそ200人が詰めかけ、熱心に聞き入っていました。